世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

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カーテン越しから「呉松さんいらっしゃいますか?」と男性の声が聞こえたので、良輔が「どうぞ」と入室を促した。
 中に入ってきたのは、黒のスーツ姿で、長身ですらりとした少し赤みがかったパーマの男性。顔は西洋の人と間違えられそうな目鼻立ち。
 手にはタブレットPCと呉松周子の名前が書かれたバインダーを抱えている。
大磐(おおいわ)さん、いつもお世話になってます」
 良輔は立ち上がって結花に挨拶するように促す。

 わー、俳優さんみたい! この人なに? 施設の偉い人? うーん、見た目は75点かな。
 結婚指輪は……してなさそうね。
 こんな顔のいい人、ワンチャン結婚できるかな?

「ね、大磐さんっていうの? 私、依田周子の娘の、依田結花です! ゆいちゃんって呼んでね! 年いくつ? 彼女いるの?」
「この子がうちの自慢の娘の結花よ。あら、お二人ならお似合いじゃない? たしか年は42だっけ、うちのゆいちゃん可愛いでしょー」
「お、お母さん、そっくりですね。周子さんも、若い頃可愛らしかったんでしょうね」
 初対面でいきなりプライベートのことを聞かれたので、大磐は困惑した表情を見せる。
 それが精一杯の返しだった。
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