世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

3

 営業が終わり片付けやミーティングが終わると、ホステス達はバックヤードで着替えていた。

「美音ちゃんしばらく来れないってマジ?」
「ママ言ってたもんねー」
「最近変だよね。ミス増えちゃってるし、ほら、先週来た時さ……」

 ホステスの1人が話したのは、先週の土曜日に来た男性客2名のことだ。
 美音の指名客である森本(もりもと)町田(まちだ)という男性がいる。
 2人は同業種の関係で親族でもある。
 公私ともに30年以上の付き合いで仲がいい。
 森本は焼酎水割り、町田はウィスキーの水割りだが。それぞれ逆で出してしまい、2人に言われて気づいた。
 同席していたホステスは、お手洗いで席をはずしていた。

「今までそんなことしなかったのに、どうしたんだろ?」
「ほんと変よね。急に休み出すし」
「ママは後釜に咲羽ちゃん指名していたね。他に出来そうな人いないし」
「咲羽ちゃんなら、大丈夫よ。ほら可愛いし」
「気遣い上手いし、来て1年なのにトップでしょ? すごいよね!」 
 
 咲羽よりかなり年下のホステス達の褒める声。
 それがなんとも心地いいものほどない。
 今まで同性に煙たがられてきた咲羽にとって、快感だった。


 やっと私が1番になったの。キープできそうになった。
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