僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
その事実が、私をまた灰色の世界から引きずり上げる。

――カシャッ!

記憶の中の、天宮くんのカメラの音が、耳元で強く鳴り響いた。

久しぶりの感覚だった。

虹色のプリズムがくすんだ私の瞳に映り込み、背筋を奮い立たせる。

彼はそのシャッター音で、私の世界をいつも色づけてくれた。

マリーゴールドのオレンジ、色とりどりの花火、海の青、夕焼けの茜色。

世界にこんなにも色があふれていることを教えてくれた。

ファインダー越しに彼の視線を感じているだけで、何者かになれた気がした。

過去のトラウマを思い出したからって、何だというのだろう?

別に強くならなくていい、弱いままでいい、私は弱い人間なのだから。

だけど弱い心ごと、彼の作るフラッシュの光に埋もれさせてしまえばいいのだ。

灰色の世界に再び引きずり込まれそうになっても、何度でもあの光を思い出せばいい。

――ああ。天宮くんに、また撮られたい。
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