僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
天宮くんいわく、今までは薬物で病気の進行をおさえていたため、普通の人とほぼ変わらない生活ができていたらしい。

だけど急に視界がブラックアウトする暗転症状と呼ばれる症状が、この頃立て続けに起こり、集中的な薬物治療のために入院しているとのこと。

暗転症状は、一時的に目が見えなくなるだけじゃない。

急に闇に突き落とされた感覚から、閉所恐怖症に似た精神混乱を引き起こす。そんなことを日に何度も繰り返していると、日常生活すらままならなくなるという。

落ち着いた物言いをしていた天宮くんは、いずれ失明することを受け入れているようだった。

生まれつき霞病を患い、色覚障害とともに生きてきたのだから、覚悟はできていたのだろう。

あんなにも写真を撮ることが好きな天宮くんから、色だけでなく、視力そのものを奪うなんて。

世の中はなんて残酷なのだろう。
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