息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
いわくの地/その2
多田は話し始めた。
「まず、ここの隠山(かくれやま)トンネルは昭和の初期に開通したものですが、工事作業員が数人亡くなっているんですよ」
多田は、いつの間にか右手に収まっていた虫眼鏡(拡大鏡)で地図帳を覗きこむと、隠山トンネル付近を指した。
”あのトンネルだ…”
まさしく隠山トンネルは、尾隠し地蔵手前のあのトンネルに違いなかった。
「それって、トンネル工事中の事故なんですね?」
「それが…、工事が終わった後なんです。”最初”は竣工から1年後でね。実際のトンネル工事はけが人もなく、無事に終わったと伝わってるんだ」
「あのう…、そうなら何で、そのトンネルの作業員ってことで一括りされているんですか?もっとも全員がこの町の人なら数年後に亡くなって、ああ、あの工事に携わった人だってなるかもしれませんが、それだけなら、あえてトンネル工事と関連させる必要はないと思えるんですけど…」
律子は、自分でももっともな指摘をしているという自負があったが、これを受けた多田の答えを見透かしている自分もどこかにいるような気がした。
...
「それがね…、みんな、あのトンネルから10数メートルしか離れていない尾隠し地蔵の裏にそびえる大木に首を括って死んでるんだ。しかも1年毎に…。要するに、隠山トンネルの工事に携わった人間が毎年、一人づつ同じ場所で首を括って自殺したということになるんですわ…。全員、工事現場の目と鼻の先で…」
「…」
多田のその言葉を聞いた律子の全身には鳥肌が立っていた…。
それは、多田の返答自体というよりも、自分の心の奥深くで何となく予測していた”あること”…。
それに結びつくと咄嗟に悟ったことによる方が強かったのかもしれない。
「…記録では、”それ”は”規則的”に何年か続いたんですよ。だが、それ以降はトンネル工事の関係者が”そこ”で首を括るってことはなかった。そうなっている」
「でも、あの大きな杉の木では、今でも毎年何人かが首吊りで自殺しているんですよね?」
「…まあ、警察に確かめた訳じゃないから正確な統計は知らんが、首吊りはよくあるみたいだね。ああ…、それから、さっきの首吊りしたトンネル作業員、全員が長野、岐阜あたりに住んでた人だったそうだ。作業員の中には東京や遠方からの人間もいたそうだが、それらの人たちからの自殺はなかったようだ…」
多田の口調は滑舌はよいのだが、どこか深く耳に残るものがあった。
...
「その自殺した人たちが住んでいた場所、長野、岐阜あたりなら、実際はフォッサマグナの中ですかね?」
「はっきりは分からんがね…、おそらく”中”もしくは近くだと思う」
「いずれにしても、それって、長野・岐阜付近に住んでた人がもういなくなったから、自殺者が途絶えた…。そういううがった見方もできなくもないですよね」
律子の言い回しは地元の多田が、果たして”このこと”を全くの偶然と捉えているかの、探りの意味が込められていた。
「まあ、あまり考えたくはないが、可能性としてなくはないよね。私なんかはいわくの地として捉えてるし、そう聞かれればこう答えるよ(苦笑)」
多田の反応はなんともわかりやすかった…。
多田は話し始めた。
「まず、ここの隠山(かくれやま)トンネルは昭和の初期に開通したものですが、工事作業員が数人亡くなっているんですよ」
多田は、いつの間にか右手に収まっていた虫眼鏡(拡大鏡)で地図帳を覗きこむと、隠山トンネル付近を指した。
”あのトンネルだ…”
まさしく隠山トンネルは、尾隠し地蔵手前のあのトンネルに違いなかった。
「それって、トンネル工事中の事故なんですね?」
「それが…、工事が終わった後なんです。”最初”は竣工から1年後でね。実際のトンネル工事はけが人もなく、無事に終わったと伝わってるんだ」
「あのう…、そうなら何で、そのトンネルの作業員ってことで一括りされているんですか?もっとも全員がこの町の人なら数年後に亡くなって、ああ、あの工事に携わった人だってなるかもしれませんが、それだけなら、あえてトンネル工事と関連させる必要はないと思えるんですけど…」
律子は、自分でももっともな指摘をしているという自負があったが、これを受けた多田の答えを見透かしている自分もどこかにいるような気がした。
...
「それがね…、みんな、あのトンネルから10数メートルしか離れていない尾隠し地蔵の裏にそびえる大木に首を括って死んでるんだ。しかも1年毎に…。要するに、隠山トンネルの工事に携わった人間が毎年、一人づつ同じ場所で首を括って自殺したということになるんですわ…。全員、工事現場の目と鼻の先で…」
「…」
多田のその言葉を聞いた律子の全身には鳥肌が立っていた…。
それは、多田の返答自体というよりも、自分の心の奥深くで何となく予測していた”あること”…。
それに結びつくと咄嗟に悟ったことによる方が強かったのかもしれない。
「…記録では、”それ”は”規則的”に何年か続いたんですよ。だが、それ以降はトンネル工事の関係者が”そこ”で首を括るってことはなかった。そうなっている」
「でも、あの大きな杉の木では、今でも毎年何人かが首吊りで自殺しているんですよね?」
「…まあ、警察に確かめた訳じゃないから正確な統計は知らんが、首吊りはよくあるみたいだね。ああ…、それから、さっきの首吊りしたトンネル作業員、全員が長野、岐阜あたりに住んでた人だったそうだ。作業員の中には東京や遠方からの人間もいたそうだが、それらの人たちからの自殺はなかったようだ…」
多田の口調は滑舌はよいのだが、どこか深く耳に残るものがあった。
...
「その自殺した人たちが住んでいた場所、長野、岐阜あたりなら、実際はフォッサマグナの中ですかね?」
「はっきりは分からんがね…、おそらく”中”もしくは近くだと思う」
「いずれにしても、それって、長野・岐阜付近に住んでた人がもういなくなったから、自殺者が途絶えた…。そういううがった見方もできなくもないですよね」
律子の言い回しは地元の多田が、果たして”このこと”を全くの偶然と捉えているかの、探りの意味が込められていた。
「まあ、あまり考えたくはないが、可能性としてなくはないよね。私なんかはいわくの地として捉えてるし、そう聞かれればこう答えるよ(苦笑)」
多田の反応はなんともわかりやすかった…。