※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?

18.感情が欠落しているからと婚約破棄された令嬢は、幼馴染と微笑み合う

 翌日から、わたくしの隣にはいつも、エリオットがいてくれるようになった。

 これまでエリオットは、学園内ではわたくしに話し掛けることも、側にいることもしなかった。それは、わたくしがアルバートの婚約者であり、不用意に周りに誤解を与えないためだったのだけど、婚約を破棄した今、そんなことを気にする必要はない。


「クリス、緊張してる?」

「……してる。皆からの憐みの目線が痛い」


 既にわたくしとアルバートとの婚約破棄は学園に知れ渡っているらしい。皆からは『プライドが高すぎて婚約を破棄された』とか、『感情が欠落しているから、きっと婚約破棄されても痛くもかゆくもない』とか噂されてるんだろう。そう思うと、正直胸がチクチクした。


「大丈夫だよ。ちゃんと、そういう表情になってる」

「本当?」

「ホントホント」


 けれど、今日のわたくしはいつもとは違う。隣にエリオットがいてくれるから、感情が表に出ている……そのはずだ。


 わたくし達が立てた作戦はこうだ。


 まずは、エリオットの側で少しずつ感情を表に出す練習をする。いきなりアルバートの元に行っても、失敗する可能性が高いからだ。

 次に、想ったことを言葉にする練習をする。この表情のせいでわたくしには友達も碌にいない。だから、エリオットの力を借りて、少しずつ人との会話に慣れたいと思ったのだ。


「おはよう、エリオット」


 友人の多いエリオットは、沢山の人が話し掛けてくる。その一人一人に挨拶を返しながら、エリオットはさり気なくわたくしにも話を振ってくれた。


「ほら、クリスも」

「おはよう、ございます」


 ぎこちない挨拶を返しても、エリオットの友人たちは温かく受け入れてくれる。それどころか、『笑顔を初めて見た』とか、『可愛い』みたいな言葉を掛けてくれる人もいて、すごくすごく嬉しい。


 けれど次の瞬間、わたくしの心は粉々になった。


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