※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「ソッ……!」
「しっ」


 殿下はわたしの口を塞ぐと、無言で聞き耳を立てるような仕草をする。どうやら黙って見守れということらしい。理由はいまいち分からないけど、わたしはコクリと頷いた。


「――――お願いします。今年こそ、ミラとの結婚を認めてください!」

「君もしつこい男だな! 毎年言っているが、ミラに結婚など早すぎる! あの子は私の元でゆっくり過ごしてくれれば良い」

(は?)


 予想だにしなかった会話の流れに、しばし呆然としてしまう。

 今年こそ!?
 毎年!?
 っていうかソーちゃん、わたしとの結婚を認めてほしいって言った!?
 つまり、わたしとの結婚を望んでくれているってこと!?
 本当に!?


「俺達はもう十六歳です。学園内でも既に、大多数の令嬢に婚約者が居ます。
第一、ミラ自身が俺との結婚を望んでくれているのに、そんなことを仰って良いのですか?」

「本人がそう言ったのか? 三年間、手紙の一枚すら寄こさなかったような男と、ミラが結婚したいと?」

「手紙を握りつぶしたのは貴方でしょう? 俺はこの三年間、ミラにずっと手紙を送っていました。恐らくミラの方も同じでしょう。再会した時、ミラは変わらず、俺と結婚したいと言ってくれましたよ」


 ソーちゃんの言葉に心が震える。
 どうしよう。今すぐソーちゃんのところに行って、ギュッて抱き付きたい気分だ。
 だけど、アルバート殿下は首を横に振り、事の顛末を見守るよう諭してくる。頷きつつ、わたしは静かに二人を見つめた。


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