※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 それから数日後のこと。


「お姉さま、話が全然違います! 一体どういうことなのですか⁉」


 ヒューゴ邸をブリジットの義理の妹――――スカーレットが訪れた。
 スカーレットの瞳は怒りのあまり血走り、眉間にはクッキリと皺が刻まれている。ブリジットは使用人たちに引き止められつつ、スカーレットの前に姿を見せた。


「話が違う……とは?」

「とぼけないでよ! ミカエルったら……お姉さまはあいつの女遊びが激しいこと、知っていたんでしょう?」


 スカーレットはそう口にし、唇をわななかせる。


「あら……何かと思えばそんなこと?」

「そんなこと、じゃないわ! わたくしというものが有りながら、アイツは他の女を誑かしているのよ!」


 醒めた表情のブリジットに反し、スカーレットの興奮はどんどん高まっていく。


「おまけにアイツ、なんて言ったと思う? 
『ブリジットはこんな僕でも良いって言ってくれた。浮気を容認してくれた』
――――だからわたくしにも、この条件を呑めって言うのよ⁉ ヒドイわ! こんなのあんまりよ!」

「そんなこと言われても、私は気にならなかったし」


 前婚約者とのやり取りを思い出しつつ、ブリジットは眉間に皺を寄せる。


「あんた、頭おかしいんじゃない⁉ 何が悲しくて、自分を一番に愛してくれない男と結婚なんかしなきゃならないのよ! こんな馬鹿な条件を呑むなんて信じらんないわ!」


 スカーレットは顔を真っ赤に染め、ヒステリックに叫び続ける。
 けれどブリジットをこんな考え方にしたのは他でもない、スカーレットだ。しかし、スカーレットはそのことに気づかず、ブリジットに全ての責任があると思い込んでいる。ヒューゴ邸の使用人たちは皆、腹立たし気にスカーレットのことを睨んでいた。

 これまでのブリジットだったら、スカーレットが何を言おうと、何も感じなかった。自分が貶められるのは当たり前のことで、ずっとずっと、スカーレットや義母の言葉を基準に、自分の世界や価値観を形成してきた。とはいえ、ブリジットも今回ばかりは黙っていられない。


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