※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「お二人でどのようなお話をしていたのですか?」

「そうねぇ……お仕事の話が主だったかしら。ほら、わたし達はエーファ様と違って、既にたくさんの公務が割り振られているでしょう? 国民からの重圧や期待も抱えているし、互いにしか分からない苦労があるのよね」


 ミランダはティーカップを手に取りつつ、口の端を綻ばせる。それから続けざまに口を開いた。


「それにしたって、シェイマス様は本当にすごいわ。皆が感服しているもの。シェイマス様がいれば、我が国は安泰だって。歴代のどの王よりも優秀だって、専らの評判ですわ。
おまけにビックリするぐらいカッコよくて! 国民皆がシェイマス様のことを尊敬し、愛しているんですわ」


 ミランダはそう言ってウットリと目を細める。僕はミランダを横目で見つつ、心の中で小さく笑った。


(僕なんかより、エーファの方が余程すごい)


 エーファは賢く聡明で、常に努力を惜しまない。何か国語もの言語をいとも簡単に操り、文化や芸術、歴史や経済のみならず、医療や科学分野にも詳しい。
 彼女のすごいところは、部屋の中で学ぶだけでなく、色んな所へ足を運ぶところだ。その道の専門家たちに話を聞いて回り、知識を知識で終わらせない。そんなエーファのことを、僕は心から尊敬していた。

 僕が歴代最高の王になれると言うなら、エーファはそんな僕を遥かに超越している。未来まで含め、歴代最高の王妃となるに違いない。


「――――それなのに、エーファ様は全然シェイマス様のことを褒めないんですってね! 信じられないわ」


 ミランダの不機嫌そうな声音が響き、僕は思わず顔を上げる。エーファ自身も、困惑した様子でこちらのことを見つめていた。


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