※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?

33.全力で愛を叫ばせろ(3)

***



 トミーは財産を全て没収された上で、ダミアンの領地から追放された。ダミアン曰く『脱税された分を取り返しただけ』らしく、かなり寛大な処置なんだそうだ。


(あれで寛大? どんだけあくどい商売をしていたんだ、あの男は……)


 先程トミーに聞かされた自慢話を思い返しつつ、あたしは思わず苦笑を漏らす。
 まぁ、悪魔に目をつけられて、制裁を受けて、命が無事なだけマシなのかもしれないけど。


「本当は記憶を奪ってやっても良かったのだがな……ツテと商才さえあれば、商人は幾らでも再起が出来てしまうし」


 ワイングラスを片手に、ダミアンはフッと小さく笑う。


「だけど、それをしなかったってことは、トミーにはまだ利用価値があるってことでしょう?」

「――――その通りだ。お前は中々に賢い女だな」


 珍しく褒められた上、頭まで撫でられてしまい、あたしは思わず目を瞠った。


(何よ、ダミアンの奴。普段ツンツンしている分、急にデレられると対処に困るんだけど!)


 何だか無性に気恥ずかしい。あたしはフイとそっぽを向いた。


「……そうでしょう? あたしって、中々に見どころがある女でしょう?」

「馬鹿者、調子に乗るな」

「痛っ!」


 ダミアンがあたしの額をピンと弾く。尖った爪が当たってめちゃくちゃ痛い。


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