Y'a pas que les grands qui rêvent
私は、これまでどんな結婚生活を送ってきたか、聞かれるままに答えた。

大学3年の終わりから、当時大学院生だった氷野高生さんと付き合っていて、

「東京で就職が決まったから、結婚して一緒に来てほしい」

そう言われ、彼を好きだった私はついていくことにした。

付き合っていた頃、彼はとても優しく、しかもルックスもかなりよかったのに、私のような地味なタイプを選んでくれたのが、とても嬉しかったのもある。

私は、全国の国公立の中ではかなり偏差値の低い、地元の公立大学出身だ。

「女は県外の学校に行く必要はない」

両親にそう言われ、私はずっと、この田舎で燻り続けるのかと思っていただけに、結婚して上京出来るというのは、とても魅力的な話でもあった。

卒業と同時の結婚…しかも上京ということに、両親は難色を示したものの、彼が両親の前でも紳士的に振る舞っていたこともあり、無事に華やかな挙式も出来、あの日、生まれてはじめて、私は“主人公”になったとも言える。

しかし、今思えば、あの結婚式が私にとって、人生のピークだったのだろう…。
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