潮風、駆ける、サボタージュ
(2年近くも前…?
本当だったとして、なんで?なんで立ち止まって見てたの?
なんで気づかなかったの?)

由夏が混乱しているのを圭吾は察した。
「パニクってる?」
少し笑ったように言った。
由夏はうまく言葉にできず、うんうんと頷いた。その様子を見た圭吾はプッと小さく吹き出した。
「藤澤もパニクるんだな。すっげークールなのかと思ってたけど、今日でだいぶ印象変わった。」
それは自分だって同じだ、と由夏は眉を寄せながら圭吾を見た。

圭吾は上体を起こすと、どこから話したものかと少しの間逡巡するように空を仰ぎ見てから話し始めた。
「俺って勉強できるじゃん?」
「………」
「………」
あまりに唐突な発言に、由夏はぽかんと頭の上に「?」が浮かんだ顔をした。それを見た圭吾も“当たり前だよな”と思って何故だかつられて呆然としてしまった。
「じ、自慢?」
「いや、まあ今のは俺がわるいんだけど、自慢とかじゃなくて…」
しまったという表情をして、片手で軽く髪を掻きむしるようか仕草をした。
「うーん…自慢ぽいけど、事実だよね。高橋は勉強できる、成績良い。」
圭吾が自慢をしているわけではなく、話したい続きがあるのだろうと察した由夏が会話の続きを促すように言った。

「俺にもあるんだ、プレッシャーってやつが。」
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