落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
第四章 竜の怒りと、後悔と
 ヴィーは業火の山の火口付近に降り立つと私を降ろした。上空からも感じた熱風は、降り立つと、なお勢いを増す。あまりの熱さに、息をするのも躊躇われるほどだ。
「ここにお前を置いていく。人間ではこの暑さに耐えられず、十分も持たぬだろう」
「…………」
「なにか、言いたいことはあるか?」
 黙って彼を見つめていると、ヴィーが聞いてきた。言いたいことなんてない。元々、森でホミとリンレンに会わなかったら、こうなる予定だったのだから。
 でも……そうね、最後なのだから聞いてもらおうかしら。
 私は袖で口を押さえ、熱気が入らないようにして小さく答えた。
「ではお言葉に甘えて……ホミとリンレンにありがとう、と。アミュレットを作れなかったみなさんにごめんなさい、と」
「伝えよう」
「最後に……ドーランの王様、お手を煩わせてすみません」
 そういうと、黒竜は瞼をピクンと震わせた。
「命乞いはしないのか? 人間は自分の命を守るためなら、なんでもするのだろう。他者を踏みつけたり、欺いたり、お前のように嘘を吐いたり」
「私は……嘘を吐いた人間なので、こうなっても仕方ないでしょう。しかし、人間が全て悪者ではないことを知って欲しいのです」
 彼が人間に対して並々ならぬ憎しみを持っているのはわかっている。だけど世界は広い。悪い人間も多いけれど、それ以上に心の優しい人間もたくさんいる。だから、偏見を持たないで、視野を広げて、本質を見て欲しい。ヴィーのこと、とても仲間思いのいい王様だと思うから、過去に縛られて生きて欲しくないのだ。
「……っ、う、嘘吐きの言うことなど信じない!」
< 136 / 264 >

この作品をシェア

pagetop