落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「は? いいえ、おれも一緒にホミを探しますっ!」
「マゴットの様子を見て来い。辛い時は、愛する者に側にいてほしいと思うものだろう?」
 そのヴィーの言葉に、トネリはハッとした。悪阻の症状は誰にでもあるものだけど、程度の酷い人は本当に辛いと聞く。ご飯も食べられないし、匂いにも敏感になり、塞ぎ込んでしまう人もいるとか。だから、共感してくれる人が必要なのだ。
「確かにその通りです。一旦マゴットのところに帰ります。ごめんな、リンレン」
「とんでもない! ありがとうトネリさん。さあ、早くマゴットさんのところに行ってあげて下さい」
「ああ! きっとホミを見付けてくれよ!」
 そう言うと、トネリはヴィーに頭を下げながら、ドーラン方面へと去っていった。
 それから、ヴィーの指示に従い、私たちは別れてホミの捜索を開始した。迷いの森のバーディア側に人の気配はなく、しんと静まり返っている。若干暗くなってきたため、辺りも見えにくい。
「どこまで行ったのでしょうか? もう森を出てしまいますけど」
「入れ違いで家に帰った、ということはないか?」
「あ、そうか。それも考えられますね」
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