落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
第三章 新装開店 陽だまり雑貨茶房
次の日の朝。
昨日採取した薬草をお日様の下で干し、それが済んでからみんなで朝食を取る。今朝は、リンレンが裏の菜園で収穫したニンジンのジュースと、町のパン屋で購入したパンプキンパイ。どちらも素材の味が活きていて、とても美味しかった。獣人たちは五感が鋭く、もちろん味覚も人間より発達している。つまり、国民みんな美食家で、どこでなにを食べても味に間違いはなく、必ず美味しいものが出てくるというわけだ。
「パトリシア、食べ物で嫌いなものはありますか?」
突然、リンレンに尋ねられた。今、この家で食事を用意してくれているのは彼である。だから、一応私の好みも聞いておこうと思ったのかもしれない。
「ううん、特にないわ。ライガン師匠のところでは、あまり食料が豊富じゃなかったから、あれが嫌いこれが嫌いなんて言っていられなくて。それこそ兄と、食べられる野草を探し出して茹でたこともあった。今思えば、すごく野性的な生活だったわね」
「あ、それで薬草を取る時の手際がよかったんだね!」
「うふふ、そうでしょ? 慣れているもの」
 感心するホミに笑い返し、パンプキンパイを頬張る。甘い味が口内に広がると、多幸感が心を満たした。
 ああ、ドーラン、最高! 永住したい!
 なんて大仰に幸福を噛み締めていると、誰かが店舗の扉を叩く音がした。
「あれ? 誰だろう、こんな早くに」
 リンレンが首を捻る。
「トネリさんかしら?」
「トネリさんなら自宅の勝手口から来ると思います。僕、ちょっと見てきますね」
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