信じていた···疑う事も··なかった
動き出す⑤

時任先生より
中々、早都が離婚届に
記入しないため説得をしています。
と、連絡が入る。

定期的に先生から
現状の進みぐわいの連絡を
頂いていた。

暫くして
やっと記入して貰えました。
と、連絡があった。

ホッとしている気持ちと
これで早都とは他人になったのだと
寂しい気持ちもあって
どこまで·····と、自分を持て余す。

年を老いても
私がデザインした家で
二人で暮らそうね。
と、話して·····いた······
そんな······

ああ、止めよう
考えない。考えない。



それからは、時任先生より
財産分与の振込や
早都からの慰謝料の振込
彼女に使用した金額の振込の連絡が
あった。

彼女・北山さんからは、
お父様より振込があり。
お手紙を先生より頂いた。

彼女からの手紙なら
読まずに先生にお渡しするが
お父様からとなると
そうは行かない。

だが、どうしても彼女に使用した
同じ金額を自分の通帳に入れて置きたくなく
凛や茉優、時任先生に
相談して施設へ寄付をさせて頂いた。

こんな気持ちのお金で
本当に申し訳なかったが
「頂く側には、そんな経緯は
分からないから心配ないし
助かる筈です。」
と、先生に言って貰えて
心が少し軽くなった。

それから少しして
やっと両親に離婚の話をした。

母は、とても心配して
「帰ってきたら?」
と、言ってくれたが
私が今の仕事が大好きだと
知っている父が止めてくれた。

父っ子の私を
父が心配していない筈はないが
何も言わずに
「沙良の思うようにやりなさい。」
と、言ってくれた父に
やはり、大好きな父だと。

もちろん、母は、女性としての
辛さや悲しさを心配してくれているのは
わかっている。

だが、今両親に会えば
私は、全てを投げ出して
実家に引きこもるかも知れない
それだけ弱っている事を
痛感していた。

だからこそ、踏ん張っていた。

「ごめんね。心配かけて。
でも、もう少し頑張ってみたいの。
お母さんの手料理食べたくなったり
お父さんと晩酌したくなったら
帰っても良い?」
と、言う私に
「待ってるから。」
と、母。

母の優しさに涙が出る。
「おかぁ···っ···さん···」
「沙良。沙良が頑張ってるのは
良くわかっているの
好きな事をやらせてあげたいとも。
でもね、お父さんにとっても
私にとっても
あなたは大切な大事な娘なの。
たまには、私達を思い出して
顔を見せてね。」
と、言ってくれる母に
うん、うん、と何度も頷いた。

もう少し、元気になったら
帰ろう。
と、沙良は思った。
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