裏側の恋人たち
「えー、ご結婚されるんですか。もうお式とか入籍の日取りも決まっているんですか?いいなぁ。おめでとうございます」
ふと”結婚”の言葉に反応して顔を上げるとクミちゃんの祝福の言葉に美也子が頬を染めていた。
「え、美也子結婚するの?聞いてないんだけど」
「すみません、センパイ。遠恋だった彼が戻ってきたんで、そういうことに」
「なんだ、そっかぁ、よかったねぇ。で、いつ?」
「まだ日にちまでは。それより、ここでレストランウエディング出来たら素敵ですよねぇ。ここのお料理気に入っちゃった。何を食べても美味しいし。私も彼も料理にこだわりたいタイプなんですよ。ここならロケーションもいいし、お願いできないかなあ」
「わあ、それ素敵ですね。ここでウエディングなんて私もちょっと憧れちゃいます。ここの店長に相談してみたらどうですか。うちの会社、二ノ宮グループのご令嬢のガーデンウエディングパーティーもやって大好評だったからレストランウエディングもきっと大丈夫ですよ」
クミちゃんはノリノリではしゃいでいる。
勝手に大丈夫とか言っちゃってるけど、それ大丈夫なのか?
「うちの会社って?」
「あー、スミマセン説明不足でした。私のバイト先とこのお店は同じオーナーが経営してるんですよ。オーナーはここ以外にも麻布にフレンチや原宿にカフェとか幾つか飲食店を持ってます」
ここの経営のことを知らない美也子にクミちゃんが瑞紀の経営する飲食店の説明をしていく。
「予算とか招待客の人数とかあるでしょうけど、可能かどうかだけでも店長にちらっと聞いてみたらどうですか?ね、響さん」
「え、ええ、そうね」
クミちゃんに急にふられて思わず同意したけど、なんでそこで私。
結婚関係のこともそうだけど、ここの経営のこともなにも知らないけど。
「だって私うちの店長ならともかくここの店長さんとは気軽に会話できるような関係にないです。ここの店長さんはオーナーのお友達だし、響さんとも親しいんですよね。ここって貸し切り営業のイメージないんでウエディング出来るかだけでも先に聞いてみた方がいいかなって」
ああ、そういうことか。
以前は貸し切り営業もやってたみたいだけど、最近は聞かなかったからもしかして何か理由があって貸し切りを断わってるのかもしれない。
確かにクミちゃんと比べたら私の方が将樹さんと気安く話は出来るかもしれないけど。
ただちょっと今日は喋りたくない気分なんだけどなあ。
「せんぱぁーい」
美也子が期待に満ちた目で見てくる。
「ーーー聞くのはいいけどさ。でも、本気でここでやりたいって思ってるの?」
「思ってます、思ってます。実は私も彼も料理以外には拘りがなくてですね、レストランウエディングにしたいって思ってあちこち調べてはいたんです。プランナーの話を聞いたりとかいろいろしてるんですけど、そこで紹介してもらったお店はどこもぴんとくるものがなくて」
”プランナー”と聞いてイヤなことを思い出した。
まあ、もう私にはまーったく関係ございませんけども。
「いいよ、将樹さんにーーここの店長に聞いてみてあげる。まずここでウエディングパーティーをやってくれるかってことよね」
「わー、ありがとうございます。お願いしまーす」
ウエディングってことはただの貸し切りと違うんだろうけど、私は出来るか出来ないかを聞くだけだし。あとのことは美也子が自分で聞けばいい。
「じゃあ食べ終わってから声掛けるってことでいい?まだ食事の途中だし」
「はいはーい、もちろん」と美也子がデザートのマスカルポーネのプリンを口に運ぶ。
「うわ、デザートも絶品」
ひとくちずつ丁寧にスプーンですくいしっかり味わって蕩けるような顔をする美也子の姿から感じるのは好感しかない。
確かに美也子は食べるのが好きで、いつもお弁当も手作りだった。夜勤の時には手作りの海苔巻きとかひとくちサイズのサンドイッチとか私の分まで作ってきてくれるような子だった。
瑞紀という人間の男の部分はもう信用することは出来ないけれど、仕事に関しては信用している。
特にこの店の店長はただの雇われ店長ではない。瑞紀の友人で経営にも関わっている立場のひとだからきちんと判断して対応してくれると思う。
ま、私は声を掛けるだけで、それ以上踏み込むつもりはないんだけど。
ふと”結婚”の言葉に反応して顔を上げるとクミちゃんの祝福の言葉に美也子が頬を染めていた。
「え、美也子結婚するの?聞いてないんだけど」
「すみません、センパイ。遠恋だった彼が戻ってきたんで、そういうことに」
「なんだ、そっかぁ、よかったねぇ。で、いつ?」
「まだ日にちまでは。それより、ここでレストランウエディング出来たら素敵ですよねぇ。ここのお料理気に入っちゃった。何を食べても美味しいし。私も彼も料理にこだわりたいタイプなんですよ。ここならロケーションもいいし、お願いできないかなあ」
「わあ、それ素敵ですね。ここでウエディングなんて私もちょっと憧れちゃいます。ここの店長に相談してみたらどうですか。うちの会社、二ノ宮グループのご令嬢のガーデンウエディングパーティーもやって大好評だったからレストランウエディングもきっと大丈夫ですよ」
クミちゃんはノリノリではしゃいでいる。
勝手に大丈夫とか言っちゃってるけど、それ大丈夫なのか?
「うちの会社って?」
「あー、スミマセン説明不足でした。私のバイト先とこのお店は同じオーナーが経営してるんですよ。オーナーはここ以外にも麻布にフレンチや原宿にカフェとか幾つか飲食店を持ってます」
ここの経営のことを知らない美也子にクミちゃんが瑞紀の経営する飲食店の説明をしていく。
「予算とか招待客の人数とかあるでしょうけど、可能かどうかだけでも店長にちらっと聞いてみたらどうですか?ね、響さん」
「え、ええ、そうね」
クミちゃんに急にふられて思わず同意したけど、なんでそこで私。
結婚関係のこともそうだけど、ここの経営のこともなにも知らないけど。
「だって私うちの店長ならともかくここの店長さんとは気軽に会話できるような関係にないです。ここの店長さんはオーナーのお友達だし、響さんとも親しいんですよね。ここって貸し切り営業のイメージないんでウエディング出来るかだけでも先に聞いてみた方がいいかなって」
ああ、そういうことか。
以前は貸し切り営業もやってたみたいだけど、最近は聞かなかったからもしかして何か理由があって貸し切りを断わってるのかもしれない。
確かにクミちゃんと比べたら私の方が将樹さんと気安く話は出来るかもしれないけど。
ただちょっと今日は喋りたくない気分なんだけどなあ。
「せんぱぁーい」
美也子が期待に満ちた目で見てくる。
「ーーー聞くのはいいけどさ。でも、本気でここでやりたいって思ってるの?」
「思ってます、思ってます。実は私も彼も料理以外には拘りがなくてですね、レストランウエディングにしたいって思ってあちこち調べてはいたんです。プランナーの話を聞いたりとかいろいろしてるんですけど、そこで紹介してもらったお店はどこもぴんとくるものがなくて」
”プランナー”と聞いてイヤなことを思い出した。
まあ、もう私にはまーったく関係ございませんけども。
「いいよ、将樹さんにーーここの店長に聞いてみてあげる。まずここでウエディングパーティーをやってくれるかってことよね」
「わー、ありがとうございます。お願いしまーす」
ウエディングってことはただの貸し切りと違うんだろうけど、私は出来るか出来ないかを聞くだけだし。あとのことは美也子が自分で聞けばいい。
「じゃあ食べ終わってから声掛けるってことでいい?まだ食事の途中だし」
「はいはーい、もちろん」と美也子がデザートのマスカルポーネのプリンを口に運ぶ。
「うわ、デザートも絶品」
ひとくちずつ丁寧にスプーンですくいしっかり味わって蕩けるような顔をする美也子の姿から感じるのは好感しかない。
確かに美也子は食べるのが好きで、いつもお弁当も手作りだった。夜勤の時には手作りの海苔巻きとかひとくちサイズのサンドイッチとか私の分まで作ってきてくれるような子だった。
瑞紀という人間の男の部分はもう信用することは出来ないけれど、仕事に関しては信用している。
特にこの店の店長はただの雇われ店長ではない。瑞紀の友人で経営にも関わっている立場のひとだからきちんと判断して対応してくれると思う。
ま、私は声を掛けるだけで、それ以上踏み込むつもりはないんだけど。