裏側の恋人たち
*****
約束の土曜日のランチタイム、わたしは『ル・ソレイユ』で後輩の美也子とクミちゃんを引き合わせていた。
「お忙しいところご足労いただきありがとうございます」
「あら、堅苦しい挨拶をどうも。でもわたし採用担当でも何でもないんだから楽にして何でも聞いてね」
ちょっと緊張気味なクミちゃんに美也子は人好きのする笑顔で優しく対応している。
美也子に任せておけば大丈夫だ。
「はいっ、ありがとうございます」とクミちゃんも緊張を緩めたようで安心安心。
「えーっと、クミちゃんって2年生だっけ?響先輩の病院に実習に行ってる看護学生さんなの?」
「いえ響さんは、私のバイト先の……。バイト先の?」
私との関係を聞かれたクミちゃんが「ん?」と首を傾げ私との関係を表現する言葉選びを悩んだらしい。
「バイト先の?」と美也子も首を傾げその先を促す。
「バイト先のオーナーの?」クミちゃんの言葉が私の様子を窺うようにまた疑問形になるから、
「オーナー?の??」と美也子も疑問形になる。
あーもう
更にクミちゃんが余分なことを言い出す前に「わたし、クミちゃんのバイト先のイタリア料理店の常連客なのよ」と口を挟んだ。
「で、オーナーっていうのは?」美也子が私の顔を見る。
そこ、あんまり突っ込まれたくないんだけど。
「地元の知り合いよ。そんなことより保健師業務とか採用試験の話とか大事な話よろしく」
私の中でぐいぐいと瑞紀に迫っていた日々が黒歴史になる日は近い。
”オーナー”ってどういう関係なのとかそこんとこ突っ込まれると嫌なので二人を急かした。
「ああそうね。で、私にどんなことが聞きたいのかな」
「あの、保健所って新卒と既卒で採用試験を受けるのは差がありますか?それとーーーー」
クミちゃんが姿勢を正して美也子を質問攻めにしている。
本題に入ってくれたおかげでオーナーの話から逃げられたと思う。
今回の話では私の話が役に立つことはないだろうと思うので聞き役に徹する。というか久しぶりのこの店のランチを存分に味わって食べる役かな。
予約の時に店一押しのスペシャルランチセットを頼んでおいたのですぐに前菜プレートが運ばれてきた。
あら、美味しそう。
カラフルな見た目に目を奪われていたのだけれど、何か背後からビシビシした刺すような視線を感じる。
目の前の二人の会話の邪魔をしないようにこっそりと背後を窺うとこちらを見ているイケメン店長の将樹さんとばっちり目が合った。
な、なんでそんなにガン見されているんだろうか。
正直言ってめんどくさい。
口元に笑みを乗せて小さく会釈をして料理に向き直った。
もう二度と振り向くものか。
お料理を運んでくるスタッフも何か言いたげな視線を送ってくるし、お料理は美味しいけれどあまり居心地はよくない。
やっぱりほとぼりが冷めるまで瑞紀の店には出入りするのやめようと心の中で誓い今日のところは食事に集中することにした。
あー、このお肉柔らかくて美味しっ。
人懐っこいクミちゃんと人当たりのいい美也子はウマが合ったらしく料理を口に運びつつ話に花を咲かせている。
約束の土曜日のランチタイム、わたしは『ル・ソレイユ』で後輩の美也子とクミちゃんを引き合わせていた。
「お忙しいところご足労いただきありがとうございます」
「あら、堅苦しい挨拶をどうも。でもわたし採用担当でも何でもないんだから楽にして何でも聞いてね」
ちょっと緊張気味なクミちゃんに美也子は人好きのする笑顔で優しく対応している。
美也子に任せておけば大丈夫だ。
「はいっ、ありがとうございます」とクミちゃんも緊張を緩めたようで安心安心。
「えーっと、クミちゃんって2年生だっけ?響先輩の病院に実習に行ってる看護学生さんなの?」
「いえ響さんは、私のバイト先の……。バイト先の?」
私との関係を聞かれたクミちゃんが「ん?」と首を傾げ私との関係を表現する言葉選びを悩んだらしい。
「バイト先の?」と美也子も首を傾げその先を促す。
「バイト先のオーナーの?」クミちゃんの言葉が私の様子を窺うようにまた疑問形になるから、
「オーナー?の??」と美也子も疑問形になる。
あーもう
更にクミちゃんが余分なことを言い出す前に「わたし、クミちゃんのバイト先のイタリア料理店の常連客なのよ」と口を挟んだ。
「で、オーナーっていうのは?」美也子が私の顔を見る。
そこ、あんまり突っ込まれたくないんだけど。
「地元の知り合いよ。そんなことより保健師業務とか採用試験の話とか大事な話よろしく」
私の中でぐいぐいと瑞紀に迫っていた日々が黒歴史になる日は近い。
”オーナー”ってどういう関係なのとかそこんとこ突っ込まれると嫌なので二人を急かした。
「ああそうね。で、私にどんなことが聞きたいのかな」
「あの、保健所って新卒と既卒で採用試験を受けるのは差がありますか?それとーーーー」
クミちゃんが姿勢を正して美也子を質問攻めにしている。
本題に入ってくれたおかげでオーナーの話から逃げられたと思う。
今回の話では私の話が役に立つことはないだろうと思うので聞き役に徹する。というか久しぶりのこの店のランチを存分に味わって食べる役かな。
予約の時に店一押しのスペシャルランチセットを頼んでおいたのですぐに前菜プレートが運ばれてきた。
あら、美味しそう。
カラフルな見た目に目を奪われていたのだけれど、何か背後からビシビシした刺すような視線を感じる。
目の前の二人の会話の邪魔をしないようにこっそりと背後を窺うとこちらを見ているイケメン店長の将樹さんとばっちり目が合った。
な、なんでそんなにガン見されているんだろうか。
正直言ってめんどくさい。
口元に笑みを乗せて小さく会釈をして料理に向き直った。
もう二度と振り向くものか。
お料理を運んでくるスタッフも何か言いたげな視線を送ってくるし、お料理は美味しいけれどあまり居心地はよくない。
やっぱりほとぼりが冷めるまで瑞紀の店には出入りするのやめようと心の中で誓い今日のところは食事に集中することにした。
あー、このお肉柔らかくて美味しっ。
人懐っこいクミちゃんと人当たりのいい美也子はウマが合ったらしく料理を口に運びつつ話に花を咲かせている。