裏側の恋人たち
「それよりも、響。お前、帰ったらお仕置き決定な」

「え、何でよ」

明らかに機嫌が悪いって声を出されて悪い予感がする。
お仕置きってなんだ。
私がいったい何をした。

「お前、あの狂犬に言いくるめられて俺との結婚やめようとしてなかったか」

「あ・・・・・・」

「あ、じゃねぇ」

「申し訳ございません。あの潤んだ瞳につい・・・・・・」

「つい、じゃねえから」

おおう。瑞紀がちょっとお怒りだ。
帰ってからが怖いーーー






*****


次の日、
私は夕方からの勤務で愛菜は私と入れ違いの深夜勤務だった。

私は瑞紀の嫌がらせの”お仕置き”でへろへろだったけど、愛菜の疲れ切った顔に何か共通なものを感じた。
ただレベルは段違いだと思う。愛菜の目の下のクマと白衣の隙間からチラリと見えた赤い痕に恐怖を感じたのは秘密だ。

うちの《《初夜》》は《《初夜》》だからね。

愛菜は勤務時間ギリギリで出勤してきたからほとんど話せず、こっそり「落ち着いたら話します」と苦笑いで言われた。
顔色はよくないけれど、表情は悪くないから悪いほうの事態ではないのだと思う。

大事な後輩の幸せを願っている私としては是非とも幸せな結末を期待する。

そのうち過去に何があったのかを含めて話をしてくれる気になったら教えてもらおう。

私にとってかわいいかわいい後輩だ。


私の結婚式にはふたりで参列ってことになりそうだし。

でも、チワワみたいに可愛い愛菜とお人形のように美しい雅田さんが並んで立っていたら目立つだろうなと思う。
そりゃあもう目を引くだろう。

雑誌から飛び出してきたようなキラキラした二人だ。
おそらく最大級に着飾ったウエディングドレス姿の私より・・・・・・。

それは花嫁として悔しい。
でも、招待しないわけにはいかないし。

ああ悩ましい。
ホントに悩ましい。




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