裏側の恋人たち
早朝出発で休日ツアーに参加したのは15人だった。

栗拾い、酒蔵見学、三食おやつ付き

朝食はホテルのご厚意のおにぎり弁当。ギリギリまで睡眠をとることができ、朝食を車内で食べることが出来た。

参加者は女性9人、男性6人。

若い子の中に入って大丈夫かなと思ったけど、ムードメーカーの五谷くんと斉田さんのおかげで気にしなくても大丈夫だった。

栗農園で栗拾いを楽しんだ後、同じ施設内でバーベキューランチを食べている間に農園の方が焼き栗を作ってくれていて食後のデザートにいただく。
甘くてほくほくの栗に舌鼓をうっていると、農園の方が「売店にもあるから見ていってね」なんて甘いお誘い。

栗のソフトクリームもあるし、お土産用にマロングラッセや栗ようかんも売っていた。

栗だけでなくサツマイモやカボチャのお菓子も豊富にあり、いろいろ食べたかったけれど、私のメインは日本酒だからお腹のゆとりも考慮しつつーーー。
うん、買って帰ろう。

農園を出て、酒蔵を見学した後はお楽しみの試飲、試飲、試飲。

カフェと売店が併設された試飲スペース。
カウンターにはお酒の瓶がずらりと並び絶景、絶景。

これ全部試飲していいのかな。
わくわくが止まらない。

こっちに来てから毎日が仕事って意識があって、昨日の夜以外はほとんど飲酒していなかった。
毎日の夕食の席のあの雰囲気では飲む気になれなかったってこともあるけど。

「こちらはフルーティーで女性に好まれるお味ですが、いかがですか?」

営業スマイルを浮かべ、女子受けしそうなキレイなボトルを手にしたスタッフのお兄さん。

「いえ、まず辛口からお願いできますか。できればきれっきれに辛いやつ」

「かしこまりました。それではこちらから…」

あ、気のせいかお兄さんの目がキラリと光ったような?
端にあった瓶から小さなカップに日本酒が注がれ目の前に差し出される。

「頂きます」

クンクンと香りを嗅いでから口に含むと寒々とした竹林のイメージ。
辛さの中に深みとコク。
後味にキレを感じる。

「いかがですか?」

「美味しいです。確かにキレがすごい」

プロの前で私の感想など口にするのもおこがましいので端的にしか言えませんけど。

「では、こちらは」

次のカップを受取り口に含むと、
おおー、全然違う。
目を丸くすると、私の表情にお兄さんがしてやったりの笑顔を浮かべる。

「すごいです、こっちは更に味が引き締まっていて、後味にキレがあるのは同じなんですけど、なんていうか・・・旨みがあって余韻を長く感じます-」

「ああ、お姉さん、通ですねっ!そうなんです。これは長期低温発酵させて作った自慢の酒でーーー」

お兄さんーーー酒蔵の日本酒ソムリエスタッフと意気投合し、調子に乗って次々と試飲しては気に入ったお酒を購入し全て大将のお店に配送手配した。

合計何本かなど全く気にならず。自宅に送るわけじゃないから置き場所には困らないし。うふ。
絞りたての原酒も美味しかったー。

食中酒におすすめだというお酒も送ったから大将も喜ぶだろう。

昨日の夜、ちょっとムカムカすることがあったし、私にとってはちょうどいいストレス解消だったんだけど。

まさかみんながカフェでそれぞれ美味しいものを頂きながら試飲を繰り返す私を呆れながら見ていたとは知らなかった・・・・・・。
やだー、もう教えてよ。


「日本酒に詳しいっすねー」
「全然顔色変わらないんですね」
「あんなに飲んだ後にカフェで普通にモンブラン食べるとは…どんな胃袋なんですか」
「水飲んでるのかと思いました」

「もう、姐さんって呼んでいいですか」

いいわけないだろっ。
呼ぶなよ、呼ぶなよ、絶対に呼ぶなよ。



2週間の出張というけれど、14日目は完全休養日で13日目は移動日。12日目は午後から片付けなどなど・・・ってことでお仕事は実質あと4日半。
いろいろあったけど、頑張ろう。

気分転換もしたし。

< 96 / 136 >

この作品をシェア

pagetop