裏側の恋人たち
「気まずかったっすね・・・・・・あれ福岡先生と誰でした?」

エレベーターが上りはじめると五谷くんが小さな声で斉田さんとわたしの顔を見る。

「あの気合いの入った服は曽根田さんだろう」

斉田さんが私に確認をとるように言うから小さく頷いた。
間違いない。あれは曽根田さんだった。

私の部屋を出てから福岡先生を捕まえることができて、そして私の言ったとおりうまく話し合いが出来てーーー抱き合うほどの仲になったらしい。

「コクって成功ってことですかね。曽根田さんの粘り勝ちってことか。福岡先生、優しそうだから押し切られちゃったのか。あああーこの健診が終わる頃には何組のカップルが誕生するんだろ」
五谷くんが羨ましそうな声を出す。

「五谷くんも頑張ればいいだろ」
それを余裕な感じで鼻で笑う斉田さん。

「そうだ。急なんですけど、明日俺たちホテルのバスを借りて観光に行こうって話になったんですけど、浜さんも一緒にどうですか?バスだから座席数は余裕だし」

「バス?」

「はい。俺たちレントゲン車運転するから大型免許も持っていますし、運転はバッチリですよ。ちょっと離れたところに観光栗園があって栗拾いが出来るらしいんです。そこで昼飯も食べてその後日本酒の蔵元に寄って試飲して買い物ーーー」

「行く」
斉田さんに被せるように返事をしてごめんなさい。
何だかムカムカするし、栗も食べたいし、お酒も欲しい。

「連れてってください。是非とも。あ、でも他の人たちに了解とらなくて大丈夫?」

「大丈夫ですよ。今から全員に一斉でメール回そうと思ってたんです。参加したい人はすればいいし、寝たい人もいるだろうし。休日は自由時間だからいいですよね」

「そうね。念のため、私から本部に集団で出掛けるって連絡はしておくわ」

「ありがとうございます。ちょっと遠いんで出発時間、朝早いですけどいいですか」

「もちろん、望むところです。お酒のためなら何時でも」

私が真面目に頷くと二人とも大笑いをした。

「浜さん、かっけー」

ーーー格好良くはないからね?



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