あのねあのね、
「こんなこと言うとあの子に怒られるかもだけど、ほんとはね、少しだけ望んでたんだ。なっちゃんにあの人の存在がバレること」
「え……」
「私は夫に出会って助けられて、今ではありがたいことにこうして子どもも授かることができた。けど…、仁は今もずっと縛られてるの……さっきの母親にね」
「お母さん、に……」
「そう。酷かったでしょうあの人。全部自分のいいように正当化しちゃうんだ。聞いてもらえないと駄々をこねる。まるで精神が子どものままの大人みたいな感じ」
(子どものままの大人……)
「……あ、あの……気になってたんですが、夕凪くんにお金を要求するのは、どうしてですか……?」
自分の子どもに、しかもまだ学生で働いてもいない相手にお金がほしいという理由。
私のことを彼女だと勘違いして、ひとりじめする気だと言われた意味もよくわからなかった。