あのねあのね、



「あ、聞いてないか。うちの父親、不動産会社の社長なの。夕凪不動産っていう、ちょっとデカめのね」


「っ……!?」


情報に無頓着な私でも、名前くらいは聞いたことがある。きっと、ちょっとデカいどころではない。


まさか夕凪くんが社長の息子だとは思わなかった。
開いた口が塞がらない。


(じゃ、じゃあ、夕凪くんはお坊ちゃんってことっ?)


そういえば私服やつけているアクセサリーも、ひとつひとつが大人びていて高そうだった。
つまり私が誕生日にもらったイヤーカフというものも、やはり高級品だったんだと思ったら、サーーっと血の気が引く。


「ま、仁が会社を継ぐかはわからないけど。母はもちろんそういう認識だから、全ての財産は仁に渡ると思ってるんだ」


「で、でもそれは、社長であるお父さんに言えばいいのでは……」


「うん。そうなんだけど、両親はだいぶ昔に離婚しててね、その時に今後生活できるくらいのお金は渡して別れたの」


そうだ、夕凪くんはさっきお母さんにそう訴えていた。


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