離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
一章
 一章

 翌日。東京第一国際空港。世界でも五指に入る乗降客数を誇る日本の空の玄関。パイロット、グランドスタッフ、整備士、航空管制官、グランドハンドリングなど空港では多くの人が働いている。空の安全を守るため、みな毎日必死だ。
 もちろん私たちCAも同じ。華やかなイメージを持たれがちだけどCAの仕事はかなり過酷だ。立ち仕事で体力勝負だし、運航トラブルやクレーム対応など次から次へと問題が発生する。

 私はこの春からCA三年目。

「それじゃあ、おつかれさまでした」

 ひとりだけ異なる色のスカーフをつけたチーフパーサー、客室責任者の締めの言葉に私はホッと胸を撫でおろす。今日の最終フライトのデブリーフィングが無事に終わったからだ。通称デブリは反省会のことで、新米CAにとっては接客対応のダメだった点を注意されたり知識不足を指摘されたりする時間になる。
 フライト前に行うプリブリーフィングもそうだが、厳しいと評判のチーフに当たった日は胃が痛くなるほどだ。もっとも乗客の命を預かっているんだから厳しくて当然。それがチーフの仕事でもある。

 幸い今日は大きなミスを指摘されることはなかった。と思っていたが、解散後にチーフに声をかけられてしまった。

「浜名さん」

 声の調子からお褒めの言葉ではないことが察せられる。

「は、はい」

(今日はなにかやらかしたっけ?)

 ヒヤヒヤしながら返事をする。

「お客さまとのコミュニケーションは大事だけれど、サーブを待っているほかの乗客もいるんだから上手に切りあげる術を身につけることも必要よ」
< 11 / 183 >

この作品をシェア

pagetop