離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 思い当たることがあった。ドリンクサービスのとき、生まれたばかりの孫に会いに行くのだというお婆ちゃんとつい話し込んでしまったのだ。誠実な接客は大切だけれど、ほかのお客さまに不公平だと感じさせてもいけない。限られた空間と時間で多くの乗客に応対するこの仕事の難しい部分だ。
 要領の悪い私はまだまだ先輩たちに怒られてばかりいる。

「申し訳ございませんでした。明日から気をつけます」

 私が頭をさげるとチーフは少し頬を緩めた。

「あなたがお話ししていたお客さまからは『楽しいフライトだった』とお褒めの言葉をいただきましたけどね。さ、早くあがりなさい。ボヤボヤしていると帰れなくなるわよ」
「ありがとうございます。おつかれさまでした!」

 予定のフライトを終えても急なクレームや天候不良などのイレギュラーが発生すると、対応のために残業になることもしばしばだ。『新人はそれを想定してしばらくはオフィスに残っていろ』と言うチーフもいるくらいなので今日のチーフはとても優しい。

 ちなみにJG航空のCAは総勢八千人弱。今日のフライトで一緒だったメンバーと次に同じ便に乗るのは何年も先ということもある。そのためプリブリーフィングはいつも自己紹介から始まるのだ。

「おつかれ。美紅と同じ便、久しぶりだよな」
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