離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

六章

六章

　夕菜から電話があったのは久しぶりのオフでたっぷりと寝坊をしてしまった朝のことだった。

「もしもし、夕菜？　電話なんて珍しいね」

　私たちの仕事は不規則で電話をするのに適した時間が存在しない。だから自然と連絡はメッセージアプリを使うことが多くなる。
『……うん。急にごめんね。今、少し話せる？』

　いつもハキハキとした彼女にしてはなんだか歯切れが悪い。なにかあったのかな？と心配しながら私は答える。

「今日はオフだから大丈夫だよ。夕菜は？」

　桔平さんは朝一のフライトのためまだ暗いうちに家を出ていた。私はゆうべ遅かったのでお見送りはできていない。

『私は今山形。次のフライトまでちょっと時間があるから』
「そうなんだ。どうかしたの？」
『実はね、同期の子から美紅に連絡を取ってほしいと頼まれて』
「へぇ。誰？」

　彼女から名前を聞いても顔が浮かばない。少なくとも私は親しく言葉を交わしたことのある子ではなかった。