離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 オフィスを出たところで同じ便を担当していた園部尊(そのべたける)に声をかけられた。彼はJG航空初の男性CAのうちのひとりで、私とは同期入社になる。大学に入る際に一浪したそうで年はひとつ上の二十五歳。十五歳までイギリスで暮らしていた帰国子女なので英語はペラペラ。落ちこぼれの私とは正反対で先輩からの信頼も厚い。

「しかし今日もハードだった」

 彼はグッと背伸びをしながらぼやく。

「本当にね。一日四フライトはつらいわ」
「先輩たちも国内線のほうがきついってよく言ってるもんな」

 尊は短いツンツン髪がよく似合う爽やかな顔立ち。学生時代からずっとサッカーをしていたスポーツマンだ。本人が自覚しているのかは不明だけど、お客さまからもCA仲間からもすごくモテる。誰に対しても気さくでいいやつなので納得だ。
 尊とおしゃべりをしながらロッカールームへ向かう。空港内は広いので移動するだけでもいい運動になる。

「あ、そうだ。叔父さんの社長就任おめでとうございます」

 ややおおげさな仕草で尊が頭をさげた。私と慶一郎おじさんの関係は別に内緒にはしていない。いや、本当は秘密にしておきたかったのだけど……慶一郎おじさんがあちこちでペラペラしゃべってしまうためすぐにバレた。

「ありがとう。って私が言うのも変か」
「にしてもさ、JG航空社長の姪ともあろう女性がそんな顔でいいわけ?」
「へ?」
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