離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 特段のドレスコードがあるわけじゃないけれど大切な場所だからいつも少しだけオシャレをして行くことにしている。今夜のコーディネートはワインレッドのアンサンブルニットにブラウンの総レースのタイトスカート。秋も深まり寒くなってきたのでベージュのニットガウンも羽織る。足元はショートブーツを合わせた。

 クラシカルな扉を開けると顔なじみの店員さんが笑顔で出迎えてくれた。

「いらっしゃい、美紅ちゃん」
「こんばんは、茜子(あかねこ)さん」

 茜子さんはオーナー夫妻のひとり娘でたしか今年で三十二歳。
 色白で髪も瞳も色素の薄い綺麗な栗色。長い髪はすっきりとしたお団子ヘアにまとめている。儚げで童話に出てくるお姫さまみたいな容姿の彼女は昔も今も私の憧れのお姉さんだ。
 私が両親と暮らしていた家は現在はもう建て替えられて別の人が住んでいるけれど、ここから徒歩五分のところにあった。だから子どもの頃は茜子さんによく遊んでもらったりしていたのだ。

「慶一郎さん、もう到着してるわよ」

 茜子さんが視線で店の奥を示す。いつもの席に慶一郎おじさんが座っていた。
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