離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 慶一郎おじさんはそんなふうに言っていた。協調性があって人の話をきちんと聞けることはパイロットに必須の能力だそうだ。

(大門コーパイの便に私はまだ一度も乗ったことがないけれど……)

 みんなの話によると、彼はCAや整備士の話をしっかりと聞き全員が安心して仕事に取り組めるように心を砕いてくれる人のようだ。

「まぁ、御曹司だしあの美貌だしで周囲が勝手に萎縮している面もあるよね」

 夕菜の言葉に深く同意する。大門コーパイは〝孤高の人〟などと呼ばれているけれど、本人というより周りが彼にそのイメージを押しつけているところもあるのだろう。

(大門コーパイは内面も素敵な人だもの)

 私はそのことを知っている。
 叶わぬ恋には違いないけど、私の彼への気持ちは単なる憧れではなくきちんと恋なのだ。

(もちろん大門コーパイから見れば、自分に憧れている大勢の女性のうちのひとりでしかないんだけどね)

 私は小さくなっていく彼の背中を見送った。

 翌日。慶一郎おじさんとの約束は浅草の老舗洋食店『春日楼(かすがろう)』。亡くなった両親も大好きだった店で私のハヤシライス好きはこの店が原点だ
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