離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「美紅が来てくれてすごくうれしい。やっぱり嫌だと言われるんじゃないかとヒヤヒヤしてたから」
「や、約束を破ったりはしませんよ」

(むしろ私も同じ心配をしてた。桔平さんの気持ちが変わってしまう前に早く今日が来ないかとヤキモチしながら過ごしてた)

 現実に戻らなきゃと思いながらもこの夢が覚めないことを願ってしまう。

「今日一日、君をひとり占めできると思うとたまらないな」

 心からワクワクしたような顔をされるとまた期待が膨らむ。

(どうしよう。今日だけ…今だけ……と永遠に言い続けちゃう気がする)

 このテーマパークは比較的大人向けでこだわり抜いた世界観がウリだ。中世ヨーロッパを完璧に再現した街並みに大きな運河が流れている。

「実際にしょっちゅうヨーロッパに行く桔平さんの目から見るとどうですか?」
「よく作り込まれているなと感心する。むしろ本物のヨーロッパより綺麗なんじゃないか? それにしても平日なのに大人気だな」

 彼の言葉に私も周囲を見渡す。季節がいいこともあり、どこを見てもお客さんがいっぱいで大盛況だ。

「本当ですね。待ち時間ばかりになってしまったらごめんなさい」

 この状況ではどのアトラクションも待ち時間はそうとう長そうだ。

「いや……俺としては乗りものより美紅と話をする時間のほうがうれしいし大歓迎だ」
「えぇ?」

 さきほどから炸裂する彼の甘い攻撃に私はタジタジだ。そんな私の手を彼はさりげなくつかんだ。

「はぐれると面倒だろう」
「あ……はい」

 桔平さんはふっと頬を緩めたかと思うと、私の手を引いてグッと顔を近づけた。耳元でそっと彼がささやく。

「素直すぎ。口実に決まってるだろう。ただ手を繋ぎたいだけだ」
 
< 47 / 183 >

この作品をシェア

pagetop