離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「ううん。そんなことないから大丈夫」

 白状すると尊の言葉が当初の夫婦関係に影響を与えたのは事実だったけれど、それは尊のせいではなく言葉足らずだった自分たちの問題だと思う。だから尊には気に病んでほしくない。

「美紅は優しいな。怒っていいんだぞ、俺……自分でも最低だなと思ってるから」

 尊は天を仰ぎ少し迷うそぶりを見せたが、覚悟を決めたようにはっきりと言った。

「申し訳なかったと思いながらも、ふたりがうまくいかなくなることも同時に期待してた。俺の言葉のせいじゃない。もともと大門機長は美紅に気持ちなんかないんだって思い込もうとしたりして……でも違った。あの人はちゃんと美紅を愛してるんだな」

 尊は私に向き直り深々と頭をさげた。

「美紅の、好きな子の幸せを邪魔するようなマネして本当に反省してる。悪かった、大門機長にも直接謝るよ」

 こういう潔さは彼の長所だ。私もまっすぐに尊の顔を見る。

「尊の気持ちには応えられないけど、CAの尊は私の目標だから……これからもよろしくね」

 尊はプッと噴き出す。

「美紅は本当にお人好しだ。大門機長も苦労しそうだな」
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