偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

親友は女装男子!?


 今日は金曜日。待ちに待った週末の夜。一週間仕事を頑張った櫻川恋にとって、唯一の楽しみだといっても過言ではない。

 今宵もいつものように馴染みのBARへと赴いていた。

 平日は、都心でも名医揃いとしても名高い大規模市中病院である、病床数八百を誇る藤花《とうか》総合病院の受付業務を担っている。

 といっても派遣だ。

 だからって手なんか抜いたことはないし、仕事にもやり甲斐を持ってはいるが、それなりにストレスだって溜まる。

 なので息抜きは不可欠だ。

 なぜ平日はと前置きしたかというと。休日の土日に関しては、実家の家業であるフラワーショップ『可憐』の店頭に立って看板娘という役割を担っているからだ。

 看板娘。そんな言葉がもう似合わなくなってきたお年頃だということは、自分自身、重々承知している。

 けれども、実際にそうなのだからここは目を瞑っていてほしい。

 恋は、つい最近二十八を迎えたばかりの、いつ結婚しても不思議ではないアラサー女子である。

 ある事情により、恋が結婚して夫との間に子供をもうけるなど、このままではおそらく無理だろう。

 だからといって、結婚を諦めた訳では断じてない。

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