偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

 女装男子が、小説や漫画、ドラマなどでも取り上げられるようになった近頃では、さほど珍しくもないのかもしれない。

 念のためにいっておくが、これはあくまでも恋の中でのことだ。

 とにもかくにも、カレンと出会った時の衝撃といったら、それはもう、物凄いものだった。

 見た感じ、男子だけあって、身長が一六〇センチジャストの女性の平均的な背丈の恋よりもずいぶんと高い。

 当人がはぐらかして教えてくれないため目測でしか判断できないが、おそらく一八〇センチ近くはあるだろう。

 それを本人が気にしているのかどうかは不明だが。

 出会ってから、この一年あまり、メッセージアプリでのやり取りを介して互いの予定が合えば、月に一度ないし二度の頻度で会っている。

 それも決まって週末の夜だけ。

 しかも仄かな照明しか灯っていない、この馴染みのBAR『Chsrm(チャーム)』でだけでしか会ったことがないため、判然とはしない。

 だがスツールにゆったりと腰を据えて、長くスラリとした足を優雅に組んでいる姿を見た限りではそうだ。

 ほの暗い店内ではその足まではしかと見ることはできないが、男だとは思えないほどに、ほっそりとしていて、なかなかの美脚であることが窺える。

 出会った当初は、そんなカレンが垣間見せる、女らしい艶めいた仕草や悩ましげで気怠げなアンニュイな雰囲気に、恋は女としての自信をことごとく打ち砕かれる心地だった。

 けれどもこうして、一年もの間、彼と一緒に時間を共有しているうちに、そんなものは薄れてしまっている。

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