かくも激イカレな女たち
4人目/『開けずの手紙』より久留田ナナミ

4人目/『開けずの手紙』より久留田ナナミ

その0


ー百夜殺し百景:ナナミの場合ー



”ぎゃあああーー!!”

ナナミの絶叫には、さしもの音など存在しない空間に佇むくびれ柳さえ、鼓膜がつん裂かれんばかりものがあっただろう。
心持ち、無風にそよがれる両手代わりを兼ねた(?)ムチ状の枝で、耳を押さえてるようにも見えた。

反面、苦笑いをこらえてるような”表情”も想像し得るくらいだった。
何しろ、今”なぶり殺し”真最中の絶叫の主は、もう”なじみ”の少女なのだ。

そう…、彼女はくびれ柳に毎夜殺され続けている、それこそ”常連さん”だった。

その彼女…、久留田ナナミは、実にこの時”99夜目”を迎えていた。
つまり、百夜殺しの呪い解除まであと1夜という、”ゴール”間際まで耐え凌いだ稀有の雄だったのだ…。


***


この日の惨殺メニューは、くびれ柳のムチ状の枝先がナナミの両手両足に巻き付き、空中八つ裂き状態にして四肢をもぎ取るハードバージョンだった。

この絶叫時は、先ず両目に鋭利を成したその枝先を突き裂き、その両眼球をえぐり取られところであったのだ。

視界をなくし、言語が見いだせないほどの激痛に、ナナミは両手両足を拘束されながらものたうちまわらんばかりに、発狂寸前の様を呈していたはずだった。
ところが…。

”嬉し~~!!殺してえーー!!”

これは、そのものズバリ、この少女の正直なキモチ…、願いであったのだ…。

その純なる願い通り、彼女は両の手と足をもぎ取られ、だるま状態でくびれ柳の”足元”に墜落し、さらに両目を空にされた無残極まる様相で死骸を晒したのだ…。


***


”うひひひぃ~~、ついにやったわ❕これで私は99人殺せよるんよ…。私を仲間はずれにしよって、いじめ続けおったあの連中をぶっ殺せる‼嬉しい~”

その日の早朝…、99回目の処刑場から自室に戻ったナナミは、机の上で瞳孔を全開にして、心の中でそうほくそ笑むのだった。

そして彼女は10分早く家を出て、登校道とは逆方向に歩き、ドラッグストア前のポストへ99通の封書をゴキゲン顔で次々と投げ込んだ。
1通ごとに…。

「大橋ゆみこさーん、ご愁傷さま~❣井上良美さーん、ご愁傷さま~❣…」

約3分をかけ、その儀式は終わった。
最後の1通を投函したナナミの表情は、何かを成し遂げた充実感に満ち満ちれていた…。






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