燃ゆる想いを 箏の調べに ~あやかし狐の恋の手ほどき~
 「もう!どうしてそんな意地悪なこと言う
んですかっ。どんなに別れが辛くても、自分
だけお婆ちゃんになっちゃっても、先生や皆
のことは絶対に絶対に忘れたくありません!」

 キッ、と右京を睨め上げると右京は堪らな
いといった顔で、ふっははは、と声を上げる。

 その横顔は心底ほっとしたようにも見えて、
古都里は冗談を本気に捉えてしまったことが
恥ずかしくなってしまった。やがて目に滲ん
だ涙を拭うと、右京は頬を緩めたままでポン、
と古都里の頭に手を載せる。

 「ごめん、そう言ってくれるとわかってて
口にしたんだけど。やっぱり古都里さんは僕
が見込んだだけのことはあるね。そういう気
丈夫なところが魅力的で堪らない。でもね」

 ポンポン、と、子どもにそうするように頭
に置かれていた手が離れて、すっ、と足元を
指差す。不思議に思ってその指先を辿った古
都里は、次の瞬間、ああっ、と声をひっくり
返した。

 「どうやら僕たちは裸足でベランダに出て
しまったようだ。足の裏が汚れてしまってい
るだろうから、そろそろ靴下を脱いで部屋に
戻ろうか」

 「は、はいぃ」

 ベランダ口に置かれた一つしかないサンダ
ルを振り返って古都里が肩を竦めると、二人
はどちらともなく笑みを零したのだった。
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