【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「ラルカ⁉」


 ブラントは慌てて、ラルカの隣へ移動した。
 ラルカの背中を擦りながら、彼女の手のひらをギュッと握る。


「すみません、僕がもっと早くに迎えに行っていれば! 貴女にこんな想いはさせなかったのに……」


 悔しげに顔を歪めるブラントに、ラルカは首を横に振る。


「違うんです、ブラントさま。そうじゃないの……。
わたくしの方こそ、貴方に謝らなければならないことがあるんです」

「僕に? 一体何を……」


 尋ねられ、ラルカはしばし唇を噛む。

 本当はまだ、言葉にしたくない。
 このときを――――彼との関係を、終わらせたくない。

 けれど、言わなければ。
 自分のわがままで、ブラントの幸せを台無しにしてはいけない。

 ラルカは意を決して口を開いた。


「ブラントさま……ブラントさまは本当は――――結婚を望んでいらっしゃった。貴方には他に、想い人が居らっしゃるのでしょう?」

「――――え?」


 全く思いがけないことを尋ねられ、ブラントは困惑の表情を浮かべる。


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