【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「正直わたくしは、姉さまは一生子を持つべきではないと思っていました。あの性格ですから……生まれてくる子どもには、わたくしのような辛い思いをさせたくないなって」


 ラルカが小さく息をつく。生まれたときから着るものも、髪型も、メイクも、仕事も、結婚を含む将来の生き方に至るまで、すべてをメイシュの思うがままに操られてきたラルカだ。メイシュの子どもの心配をするのは当然のことである。


「だけど、最近の姉さまは本当に変わられました。直接お会いするのはチャリティーイベント以来ですが、日々送られてくる手紙からも、父や義兄から聞いた話からも、その様子がうかがえますもの」


 イベント――というのは、一年半前に行われた、子どものためのチャリティーイベントのことだ。ラルカの主人である王女エルミラが主催したもので、ドレスや化粧、剣術の無料体験など、子どもたちが楽しんでもらえるような催しを多数実施した。

 そのなかで、ラルカはメイシュに自分の気持ちを……自分らしく生きていきたいという想いを打ち明けた。本当はどんな服を着たいと思っていたのか、どんな仕事をしたいと思っているのか、結婚についての考え――それらは、これまでちっとも聞く耳を持ってもらえなかったことだ。

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