【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「けれど、ブラントさまは今、アミル殿下の側近でいらっしゃいますもの。なにか、考えが変わるキッカケがお有りになったのでしょう?」


 ラルカの問いかけに、ブラントは嬉しそうに微笑む。


「ええ! あの日の出会いがあったから、今の僕が居ます。心から護りたいもの、成し遂げたいことができたからこそ、僕はアミル殿下に直接お仕えするまでに成長を遂げることができました。本当に、心から感謝しています」


 瞳をキラキラと輝かせ、愛しげに目を細めたブラントの姿に、ラルカは密かに息を呑む。


(どうしてでしょう?)


 胸のあたりがモヤモヤする。彼の言葉を反芻しながら、何故だか気持ちが沈んでいく。
 こんなことではいけない――――ラルカはそっと首を振りつつ、無理やり笑顔を取り繕った。


「ブラントさまにそんな風に思っていただけるんですもの。きっと……とても素敵な人なのでしょうね?」


 そう言葉にしてみて、ラルカはとても後悔した。
 どうしてそんなことを尋ねてしまったのだろう。

 聞きたい。
 けれど、聞きたくない。

 ブラントの心をこんなにも動かした人がいることを。
 彼に大切に思われている人がいることを。

 ラルカは己の言動に戸惑いつつ、ブラントを見つめ続ける。


「はい! この上なく素晴らしい女性ですよ!」


 ブラントが嬉しそうに微笑む。ラルカの胸が小さく軋んだ。 
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