もうごめん、なんて言わないで
大きな門をくぐって入ったカジノ場内は、多くの人で賑わいを見せる。
いろんな種類のライトが天井を彩り、入り口付近に下がる大きなシャンデリアが存在感を見せる。
遠くまで長く伸びるカーペットの両脇には、テーブルゲームの席がずらりと並び、その奥には大量のスロットマシンがチカチカと液晶の光を放つ。
目に飛び込む景色は一気に世界を変えた。
ルーレット、ポーカー、ブラックジャック。
みんなはそれぞれ好きなゲームに散らばってしまい、残されたのは私と杏奈、そして慶タロー。あまり興味のない私たちは行き場をなくす。
ふらふらと歩きながらカクテルウエイトレスからマルガリータを受け取った。
「こいっこいっこいっ!」
駒井くんたちはルーレットで興奮していた。
彼らの周りの空いている椅子に座ってみたけれど、私たちが来たことなんて目もくれずゲームに没頭している。
「うわあ、またかよ」
予想は外れ、情けない声を出す。
彼らの前には残り少なくなったチップが置かれ、見る限り大損しているようだ。
マルガリータを飲みつつ、ぐるぐる回るルーレットを眺めていたら、急にぶるっと寒さがこみ上げてきた。
「どうかした?」
「ううん、なんでもないよ」
心配そうに見てくる杏奈には笑顔で誤魔化した。