溺愛執事と極上生活
「風葉様、お車の準備ができましたよ!」
「あ、はい!
お祖父様、行ってきます!」
毅登が呼びに来て、風葉は玄関先で喜一郎達に向き直った。

「あぁ、行ってらっしゃい!」
「風葉様、行ってらっしゃいませ!」
「「「行ってらっしゃいませ!」」」

喜一郎と美間。
使用人達が、挨拶をする。

そこに━━━━━
「お嬢様!」
「ん?中道さん?」

「間に合ったよかった!
簡単な物で申し訳ないのですが、お弁当です!」

「え!?嘘…ありがとうございます!
嬉しい~
私、中道さんのお料理大好きなんです!
いつも、お弁当も楽しみで!
本当に、ありがとうございます!
………………あ…でも…無理させて、ごめんなさい!」
「そんなこと……
お嬢様のその笑顔を見るだけで、十分です!
お嬢様のためなら、多少の無理はどうってことないですよ!
今日も、行ってらっしゃいませ!」

「はい!行ってきます!
笹田さんも、この髪飾りありがとうございます!」

「いいえ!
フフ…お嬢様、とてもお似合いですよ!」
笹田が微笑ましく風葉を見ていた。

「風葉様、参りましょう」
毅登に言われ、風葉は小さく手を振り屋敷を出たのだった。


「━━━━━名高さん」
車に揺られながら、運転席の毅登に声をかける。

「はい」
「名高さんも、ごめんなさい!
朝からバタバタさせてしまって……」

「そんなこと、気にされないでください。
昨日は、僕との契約でかなり疲れさせてしまいましたもんね。
僕の方が謝らなければならないのに……」
「そう言っていただけると……
ありがとうございます!」

バックミラー越しに、微笑む毅登。
風葉も、安心したように微笑んだ。


学園に着き、運転席から降りた毅登が後部座席を開けた。
「風葉様、どうぞ?」
手を差し出す。

しかし風葉はどうしても、遠慮がちになってしまう。
風葉は、毅登の指先を小さく握った。

“風葉様は、元・一般階級の方”
毅登の脳裏に、美間の言葉が蘇る。

毅登は風葉の手を繋ぎ直して、引っ張り外で誘導した。
「あ、ありがとうございます/////」

顔を赤らめる風葉に、毅登は微笑んだ。
「風葉様、車を停めてきます。
ここで、お待ちください」
「あ、はい」

運転席のドアを開けようとして、思い出したように風葉に向き直った毅登。
「あ!お一人で教室に行かないでくださいね!」

風葉のことだ。
気を遣って、一人で行こうとするだろう。

毅登は微笑み、釘を刺すように言った。
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