溺愛執事と極上生活
衝動
「━━━━風葉様。
急ぎ、車を駐車してきます。
ここから、動かないでくださいね!」

会場に着き、エントランス前で降ろされた風葉。
やっぱり毅登は、風葉の手を握り言い聞かせるように言った。

頷く風葉に、微笑み運転席に乗り込んだ。

走り出した車を見届けて、風葉はなんとなく空を見上げた。
「あ…今日、満月なんだ!
綺麗……/////
フフ…なんか良いことあるかなぁー(笑)」

呟き、微笑んでいると━━━━━

「今日は、満月じゃねぇよ」
と、声が聞こえてきた。

「え?」
声の方を見ると、隣に男性が立って見ていた。

「満月は、あ、し、た!」
「え?あ、そ、そうなんですね!すみません」

「いや、謝ることじゃない」

「え?あ、アハハ…
なんか、クセになってて…(笑)」
苦笑いをする、風葉。
「………」

「………ん?どうしました?」
ジッと見つめられ、風葉は首をかしげ見上げた。

「君は、どこのご令嬢?」

「え?あ、芥田神です。
芥田神 風葉と申します」

「え?君が!!?」
心底、驚愕している男性。
「え?あ、あの…」

「俺は、武神 亜嵐。
君の母上に振られた男の息子(笑)」

「え?あ…貴方が…!!?」
笑う亜嵐に、風葉は驚き思わず目を逸らした。


「……………なーんてな!(笑)
親父が、君の父上に言ったらしいんだ。
“彼女を連れ去れ”ってな!」

「そうだったんですか?」
「あぁ!聞いてないの?」

「はい。
母は“私のせいで、あの方を不幸にした”ってそればかり言ってたので……」

「そっか……
親父は…不幸なんかじゃないぞ?
だって、俺達は幸せだから!
母上に言ってあげなよ!」

「━━━━━━母は、もう……いません」

「え?」
「先月、病気で亡くなりました。
もうすぐ、四十九日を迎えます」

「………嘘…だろ…?」
「だから私、お祖父様に引き取られたんです」

「そうだったのか…
じゃあ、父上も?」
「はい。父も、五年前に病気で……」

「そう…か…
悪かった!
辛いことを思い出させてしまって……!」
頭を下げる、亜嵐。

「そんな…大丈夫ですよ!
でも私は、幸せです!
お祖父様や、執事の名高さん、その他の使用人の方々が大切にしてくれてるので…!」
見上げ微笑む、風葉。

「………」
「…………ん?武神さん?」

「…………風葉は、このパーティーに来たってことは、婚約者はいないんだよな?」

意味深に亜嵐が風葉を見て言った。
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