溺愛執事と極上生活
「━━━━名高さん、お嬢様の準備ができました!」

パーティー当日。
風葉の部屋の前で待っていた毅登に、笹田が声をかけた。

毅登が風葉の部屋に入る。
「失礼致します。
風葉様、外に車を回して━━━━━はっ////
これは……お美しい…/////」

「……/////」
(恥ずかしい////)

「風葉様」
「え?」

「抱き締めていいですか?」

「え?あ、は、はい…/////」

ゆっくり、包み込むように風葉を抱き締める毅登。

風葉が“近づきたい”と言ったあの日から、毅登はやたら風葉に触れるようになっていた。

「風葉様、いい匂いがします…
それに、柔らかい……!」
風葉の肩に顔を埋めて、スンスンと匂いを嗅ぐ。

「名高さ…/////もう…/////」
(ほんとに、ハズイ/////)

「はい。
では、参りましょう!
手、繋いでいいですか?」

「はい…/////」

手を差し出す毅登の手を、小さく握る。
すると、毅登が指を絡めて握ってきた。

いわゆる恋人繋ぎだ。

「あ、あの…名高さん」
「はい」

「この繋ぎ方…」
「でも“普通に”繋ぎたいとおっしゃったのは、風葉様ですよ?
僕はどちらでも構いませんが、どちらにしても手は繋ぎたいです」

「そうですが…」
「それに!」
「え?」

「“近づきたい”と言ったのも、風葉様です」

「え?あ、は、はい、そうですね…」

「このようなこと、許されないのはわかってます。
しかし風葉様が望むなら、僕はできる限りのことをしたいです」

言質を取られてる?
え?え?意外に、名高さんってしたたか?

手を引かれながら、風葉はそんなことを考えていた。


車に乗せた毅登は、風葉にシートベルトを締める。
これも最近、毅登がしたがるようになった事柄の一つだ。

“風葉様のお世話は、全て僕がしたいです”と言い出したのだ。

「あ、あの!」
「はい」

「シートベルトぐらい、自分で……」
「いえ。
“できる限りのことを”させてください」

「あ、いや、私はそんなつもりで言ったんじゃ……
私は名高さんと、対等に…」

「申し訳ありません。
対等にというのは、できかねます。
しかしこんな風に触れ合えれば、近づくことはできますよ?」
風葉の手を握り、手の甲にキスを落とした。

そして、上目遣いで風葉を見つめる。
「……//////」
風葉の顔が赤く染まる。

「…………もし、風葉様が許してくださるなら…
もっと━━━━━」
ゆっくり毅登の顔が近づく。

「や…////」
口唇が触れそうになり、思わず風葉は押し返す。

「…………なんて…申し訳ありません…
執事の分際で、調子に乗ってしまいました……」
そう言って、ゆっくり離れた。
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