溺愛執事と極上生活
「え………」
「ねぇ、俺のもんになってよ?
風葉の母上の代わりに、風葉が俺のもんになって!」

「そ、そんなこと…」


「風葉まで、武神を捨てるの?」


「え━━━━」
すがるような亜嵐の視線と声。

「…………なーんてな!(笑)
元々風葉は、俺のもんじゃねぇし(笑)」
「………」

「そんなマジになんなよ(笑)
冗談だって!」

きっと、冗談ではないだろう。
さっきの視線と声は、本心だ。

「………ごめんなさい…」
「は?」

「ごめんなさい!」
「だから、冗談だって!」

「ごめんなさい!」
「ちょっ…風葉!!」
亜嵐がグッと更に引き寄せ、風葉の頬を包み込んだ。

「私は、毅登さんが好きです……!」
「風葉…」

「毅登さんが好きなんです」
「………わかってるっうの!
二人を見たら、誰でもわかる!」

そこへ━━━━━キキーーッと車が乱暴に止まって、運転席から毅登が出てきた。

「武神様!!
言いましたよね!!?
僕の、風葉様に触らないでくださいと」
凄まじい黒い雰囲気を纏い、毅登が近づいてきた。

「別にいいじゃん。
減るもんじゃあるまいし」

「風葉様から、離れてください」
「はいはい…」
ゆっくり亜嵐が、風葉から離れる。

「風葉様、抱き締めさせてください」
優しく微笑み、両手を広げる毅登。

「でも、今は…」
「お願いします。
今抱き締めないと、僕は壊れてしまう」

「毅登さん…
はい、わかりました」
風葉は、ゆっくり毅登に近づいた。

すると包み込まれ、苦しいくらいに抱き締められたのだった。


それから亜嵐に、葉月の眠っている墓に手を合わせて行きたいと言われ、向かった三人。

墓の前で、三人は手を合わせた。

「あの、亜嵐さん」
「ん?」

「そのネックレス……」
「ん?あ、これは、親父からもらった。
なんか、綺麗だから」

風葉は、自身の首元を見せた。

「え?それ……」

「お母さんが作ったネックレスなんです。
でも、お父さんとお母さんと私の三つしかないはずなんですが……」
「だったら、たぶん…親父が風葉の母上のやつをもらったんじゃないかな?
お袋に内緒の宝物だっつってたから。
振られたんだから、これくらいいいだろ?
………って、親父も思ったんじゃねぇかな?(笑)」

「そうなんですね(笑)
でも……大切にしてくれて、ありがとうございます!
お父様にも、よろしく伝えてください」


「あぁ!
幸せになれよ!
名高、幸せにしろよ!」

「貴方に言われなくとも、幸せにしかしません!」

見据える亜嵐に、毅登もしっかり見据え言った。

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