冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
エピローグ

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 一番動揺していたのは、私でも直利さんでもなく、この人なのかもしれなかった。

「総理……」

 未だに「祖父」と呼べないその人を、私は少し困って見つめていた。普段は老獪な野心でギラギラとしている瞳が、心配一色に染まって憔悴している。

「由卯奈、大丈夫なのか。直利君から連絡をもらって、血の気が引いたぞ、わたしは」
「あは……」

 私は病室のベッドの上、元気なのを見せるためにあえて手を振ってみた。点滴の管がぶらぶら揺れると、総理は泡を食ったように「これ!」と叫ぶ。

「大人しくしておきなさい……! また倒れたらどうするんだ」

「これくらいは大丈夫ですよ……」

 私は首を横に傾げた。
 どうして私の周りの人は、みな心配性なのだろう?




 臨月に入ってすぐ、直利さんといるときに立ちくらみを起こした私は彼によってそのまま病院に担ぎ込まれた。
 赤ちゃんは元気と聞いてひと安心したけれど、診断結果は貧血。

 もともとの体質もあったのかもしれないけれど、妊娠してそれがどんどんひどくなっていたらしい。念のために入院することになった。と、いうのも。

『入院をお勧めはしますが、安静にされるのであればご自宅でも……』

 という医師の言葉を遮り、直利さんは断言した。

『入院でお願いします』
『え、直利さん?』
『君は家にいるとなにかと動いてしまうだろ?』
『でも、直利さんのご飯……』
『由卯奈。なあ、聞き間違いか? 俺の飯がどうしたって?』

 ……あんな顔で怒られたのは生まれて初めてだった。
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