実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

思い出の中にいる人



 結論を言うと、主役の座を奪うなよ、とロレンス様に冗談めかして言われたものの、パーティは大盛況で終わった。

 そして、私たち二人の噂は、尾ひれがついて王都全体に広まってしまったらしい。

 耳の奥から消えることがない会場のざわめき。
 眠ることが出来ずに、夜の庭で一人星空を見上げる。

『君は、ちゃんと幸せになれる。僕が保証しよう』

 風が木を揺らす音とともに聞こえてきたのは、優しい笑顔と、低くてその音だけで安心してしまう思い出の響き。

「旦那様、こうなることを予測されていたのですか……?」

 ときめくような恋や燃え上がるような愛ではなかったけれど、心から大切な人。
 違う世界の記憶を取り戻して、一番初めに心から信頼した人だ。

 目を閉じれば、まるで今もそばでリーフ辺境伯が、微笑んでいる気がした。
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