余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
「見せつけてくれますね~。ね,一ノ宮くん」

「うん」



結局からかわれつつも

ーそっちこそ

そう思わずにはいられない。

見上げる嬉しそうな絵莉花さんと,目を合わせ頷く一ノ宮くん。

さん付けを卒業し,くん付けにランクアップしてるのも,ちょっときゅんとする。



「あ,先輩。今度ちょっと良いところ,食べに行きましょーね! いいでしょ? 一ノ宮くん」

「はい,特に」

「出雲くんも来る?」

「ちょっと,相変わらず。何でそこで一旦俺を抜かそうとするの。真依がいるなら行くでしょ普通。一ノ宮もいるっぽいし」

「独占欲~。何でって,ちゃんとからかわれてくれる出雲くんのせいだよ。何で逆ギレしてんの?」

「は? 俺のせい?」

「ふふっ……私も行きたい」



ね,ほら……



「かわっ……えっえっちょっと,ねぇ土曜日休みだったっけ! 一ノ宮くん空いてる?!」

「会社,今週は休みです。俺は空いて……」

「出雲くんは?!」

「空いてる」

「先輩……!」



皆がいるだけで,こんなに楽しい。

この人達は,皆私を受け入れてくれてる。

私を知りたいと,見てくれてる。

初めての彼氏も,もうそんなに不安ではなくて。



「空いてたかな~」



空いているくせに。

私はそう言って,皆にくすくすと笑みを向けた。



「んーっじゃ,帰りますか~」



絵莉花さんが言う。

早急だけど,ご飯は土曜日に決まり……



「そうだね」



どこがいいかな~と,私は機嫌よく頭を巡らせた。


                
                  ーFin
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