やっぱり…キスだけでは終われない
濃厚な1週間

柾樹は日本に戻ってきてしばらくは休暇を取っていて、生活を整えるために業務をあまり入れていないと言っていた。だから、毎日私の終業時間が近くなると『仕事終わりそう?』とメッセージが届いていた。

『終業時間で終わらせて、片付けたら帰ります』と返信すると、『エントランス前に迎えに行く』とすぐに返事がくる。

柾樹は副社長という立場上、休暇中と言ってもまったくフリーとはなかなかならないらしい。いくら仕事量を抑えていてもいろいろ用事はあるはずで、忙しいのは彼の方だと思うのに、毎日迎えに来てくれて申し訳なく思う。

会社のエントランス近くで一際目立つ彼の姿を見つけた。

今日は水曜日。私の勤務している会社ではノー残業デーとなっている。他の曜日に比べ仕事を終えて出てくる社員が多い。通り過ぎていく女性たちのほとんどが振り返って柾樹を見ていく。足早に彼の元へ向かい声をかける。

「お待たせしました」

「お疲れさま」

この笑顔に酔わされる女性がいっぱいいるんだろうな…なんて考えてしまい、少しモヤッとしてしまう。
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