そのままの君が好きだよ
(だけど不思議。全然嫌な気がしない)


 寧ろ凄く……物凄く嬉しい。
 お腹の音を聴かれるなんて、本来恥ずべきことだ。けれども、殿下はそのことを珍しいと――――可愛いと言ってくれた。
 両親ですらも『ジャンルカ殿下の婚約者に選ばれた』だとか、『学業で良い成績を修めた』といった、結果でしかわたくしを評価してくれなかった。どんな形であれ、わたくし自身を受け入れてもらえることが嬉しい。今のわたくしにとって、大きな救いだった。


「ディアーナは嫌いなものはある?」

「ありませんわ」

「じゃあ、好きなものは?」

「それも特に……」


 街をブラブラと歩きながら、サムエレ殿下は質問を重ねる。
 「だったら俺の好きな食べ物にするね」と言って、殿下はお店を選んだ。わたくしが普段食べているものとは見た目も味も異なる料理。けれど、それがあまりにも美味しい。


(家でも是非、こういう料理を食べたいわ……!)


 食べながら自然と笑みが零れた。瑞々しいトマトの赤色とバジルの緑色が美しく、こんがりと焼けたチーズが食欲を誘う。口内から全身に幸せが広がっていく感覚は生まれて初めてだった。


(多分、普段食べているお料理の方が高価だし、手も掛かっているんだろうけど)


 それが全てではないのだと実感する。幸福な気づきだった。


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