そのままの君が好きだよ
「気に入ってもらえた?」

「えぇ、もちろん!」

「だと思った。実は、さっきの料理を包み焼きにしたやつがあってさ。お土産に買っていこうよ。街歩きしながら食べれるんだ」


 そう言ってサムエレ殿下は嬉しそうに笑う。わたくしは嬉しさのあまり、何度も頷きながら笑った。

 思えばジャンルカ殿下から、わたくしの好みを聞かれたことは無かった。彼の好みを教えて貰ったことも無かった。食べ物にせよ、装飾品やドレスにしろ、婚約者としての義務だから与えていただけ。ジャンルカ殿下は、本当は何一つわたくしに分け与えたくなかったのだろうなぁと思う。


(なんて……全部全部、自業自得だけれど)


 昨日の殿下の言葉を思い出すと、気持ちが重苦しくなっていく。
 全てはわたくしが殿下に歩み寄らなかったから。殿下の気持ちを考えなかったのがいけないというのに、これではまるで責任転嫁だ。


(これ以上自分のことを嫌いになんてなりたくない)


 わたくしは、わたくし自身を責めなければならない――――そう思ったその時、サムエレ殿下がわたくしを見つめていることに気づいた。


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