そのままの君が好きだよ
「まさか――――――」

「うん……祖母の命はもうあまり長くはないらしい。新しい聖女が誕生して数年後に、先代の聖女は亡くなる。そういう伝統だからね」


 我が国における聖女は、一時代に一人。けれど、他の者には持ちえない力をスムーズに引き継ぐためか――――数年間だけ二人の聖女が共に生きることができる。
 そして、歴代の聖女たちは皆、王族と婚姻関係を結んできた。ジャンルカ殿下のおばあ様――――亡き先代国王の妃もまた、聖女だ。


「そ……それで、新しい聖女はどのような――――」

「君も知っているロサリア伯爵令嬢だよ」


 聞きながら、胸が痞えるような心地がした。
 ロサリア様はわたくしと同い年の大層可愛らしい女性で、花のような可憐さと、穏やかな人柄から、殿方に人気の御令嬢だ。いつでも男性を立て、数歩後を歩くようなお淑やかな御方だから、殿下の弟君と成績争いをしているわたくしとは正反対。二つ年上のジャンルカ殿下も、彼女の名前を元々知っていたようだし、その評判は折り紙付きである。


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